パイオニクス株式会社


パイオニクスとは



エレクトロニクス悩みの種紛争鉱物とは?

紛争鉱物調査は
企業や人間の信用に関わる大事な調査です

近年の電子部品業界で実際に調査が行われるようになった、
紛争鉱物調査にスポットを当てます。
なぜ電子部品のサプライチェーンで紛争鉱物調査が必要になったのか、
紛争鉱物とは何か、背景にはどのような問題があるのかをご説明します。

 

紛争鉱物調査の始まりはいつ?入門編 ①

2000年代後半のサブプライムローン問題やリーマンショックに代表されるグローバルな金融危機を受け、米国で2010年7月に米国金融規制改革法、通称ドッド=フランク法が制定されました。

この法律の主旨は米国の複雑化・肥大化した金融システムに透明性と安定性をもたらすこと、「巨大化し、影響力を持ちすぎて潰せない企業」の解体をより容易にすること、「立場の弱い(=商品知識がない)消費者」を保護することです。

それが紛争鉱物調査と何の関係があるの?と思いますよね。
キーワードは「巨大企業」、「消費者保護」、「情報開示」、「グローバルな人道的支援」です。

4M変更とは
フェアトレード

皆さんの中には街中のお店やカフェなどで「フェアトレードコーヒー」という言葉を聞いたことがあるという人もいらっしゃるかもしれません。

「強い立場(=購買力を持つ企業)」が「弱い立場(=モノを買ってもらう生産者)」から不当に生産物を買い叩き、原料を安く仕入れて自社の利益に還元する...

という構図は、グローバル経済が発展していく中で世界的な問題となりました。

そもそも人件費や原料費をはじめとするコストを徹底的に合理化するというのが多国籍企業やグローバルなサプライチェーンを持つ企業の至上命題であるのですが、「フェアトレード」という概念は生産者と適正な価格で取引をして、消費者に提供する...というものです。

利益追求のみでなく、企業としての社会的責任(CSR)を果たすこと、それをPRすることで一定の消費者からの理解を得るという側面もあります。

また、アンジェリーナ・ジョリーが贈られた婚約指輪は「コンフリクトフリー・ダイヤモンド」ということが話題になりました。これはアフリカの紛争地域で産出されたダイヤの原石を使用していない、国連が定めた認証付きの「血塗られていないダイヤ」ということです。

自分たちが購入する商品が「道徳的な手段で」生産され、取引されたモノであるか??

それを知る手段は我々のような一般消費者にはありません。
ですが、それなりの規模を持つ企業であれば可能です。
そこでやっと登場するのが「紛争鉱物調査」です。

武装勢力の資金源となっている?

近年、コンゴ民主共和国(DRC)及び周辺9ヶ国で採掘される鉱物資源が、人権侵害、環境破壊等を引き起こしている武装勢力の資金源となっていることが世界的に問題視されるようになりました。

こういった事態に対処する為、米国株式市場に上場する企業に対し、これらの地域で産出される4つの鉱物の使用状況と供給元を開示する事を義務付けたことが紛争鉱物調査の始まりです。

2012年8月に最終調整がなされ、翌年の2013年より施行されました。
自社製品に使用される紛争鉱物が、これらの地域の武装勢力の資金源となっているかどうかを把握し、年次で開示することをアメリカが義務付けるようになったのです。
また、この調査レポートはCMRT(Conflict Minerals Reporting Template)とも呼ばれています。

コンゴってどのような国?入門編 ②

そもそも紛争鉱物調査は、なぜコンゴ民主共和国とその周辺9か国という形に限定されているのか、まずはコンゴという国がどのような国であるか知る事が必要でしょう。

コンゴ民主共和国は本来、天然資源が豊富で野生動物も多く生息している豊かな国です。
ですが、それゆえにコンゴは搾取され続ける歴史の国となってしまいました。

19世紀末にベルギーに統治されてから現在に至るまで、豊かな資源によって得た富がコンゴに住んでいる住人達へ還元されたことはなく、国連が発表している生活の質や発展度合いを示す指標である「人間開発指数(2011)」は世界最下位といった状況です。

紛争地域とレアメタル入門編 ③

長きにわたり、紛争が繰り返されてきたコンゴですが、1996年から始まった資源をめぐる紛争の犠牲者は、第二次世界大戦以来、最も多い500万人以上と言われています。

2002年に和平合意が締結され、コンゴの紛争は沈静化に向かうはずだったのですが、ルワンダ、ウガンダ、ブルンジとの国境に近い東部地方では沈静化せず、武装勢力が乱立しインフラなどの施設は破壊され、虐殺や集団暴行、略奪等の非人道的な行為が横行しています。

このような治安悪化の主な原因は、採掘地域での採掘権をめぐった武力闘争であり、争われている採掘権の背景には、私たちが日々使っている携帯やスマホの情報電子機器の進化・小型化等の理由によって「レアメタル」の世界的に需要が増しているという背景があります。

4M変更とは
紛争鉱物

では実際に紛争鉱物ってどんな鉱物を指すのでしょうか。

紛争鉱物とは「タンタル(Tantalum)、錫(Tin)、タングステン(Tungsten)、金(Gold)」を紛争鉱物(コンフリクト・ミネラル)と定義しており、略して3TGと呼ばれます。

動向

本調査は2013年より開始され、3年を迎えることになりました。 昨年は、北朝鮮が新たに紛争鉱物調査対象国と認定されました。

ロイター社の分析では、2015年に25社の米上場企業が北朝鮮から金を調達していることが判明し、北朝鮮から金など金属の供給を受けた企業は米政府から数百万ドルの罰金、刑事訴追や、ブラックリストに掲載される可能性がある事を示唆されるようになりました。

今後の課題

この様な調査は積極的に行われていくべきですが、まだまだ課題も多いようで、 例えば、下記のような問題点があるようです。

  • 顧客企業の取り組み体制に変化が見えてきたこと これは、下記の「精錬所リストの名寄せが不十分であること」にも関係してきますが、この調査に取り組んでいる事自体に評価が集中していることで、精錬所や精製所リストの具体的な明記が出来ていないことなどが問題視されました。
  • 精錬所リストの名寄せが不十分であること 精錬所のリストが未記入でも問題なかったことが問題視されています。ただ、精錬業者のリスト見直しや、識別番号が必須入力になるなど、こちらは2016年に改訂がなされています。
  • 調査、回収に対する障害があること 調査依頼先が依頼元より企業の規模が大きい場合、調査に非協力的なケースが見受けられ、CMRTを回収できない等の問題点があるようです。
    サプライチェーンの更に下流の大手企業から非協力的な企業に調査を要請してもらうなど連携を図っていく必要がありそうです。
  • 営業機密を理由に回答拒否をされること 一部の商社や化学薬品メーカーなどでは、仕入先との機密事項保持を理由に、調査を拒否される事があります。
    仕入先を明確にしたくない場合は、回収したCMRTをそのまま顧客に回答せず、自社でCMRTの会社情報を作成し、提出することを求めるなどの対応が求められています。
紛争鉱物調査をする事の意義

紛争鉱物調査は、企業や人間の信用に関わっている大事な調査の一つです。

間接的だとしても、人権侵害や環境破壊等を引き起こしている武装勢力の資金源になることは、人やその企業の命も破壊してしまうといっても過言ではありません。

人権侵害や環境破壊は決して遠くで起こっている話ではありません。
パイオニクスではこのような調査を通じて人道的問題の解決に繋がる協力ができるという事を認識し、日々対応に取り組んでおります。